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「これを、私の天職に」——妊娠中に受けたたった一度の施術を"天職"に変えた、女性専用サロン主宰・久世さんの起点と機転

女性専用サロンmilune(ミルーネ)

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久世 佑美代表

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プロフィール

久世 ゆみ(くぜ・ゆみ)
東京都内で女性専用のトリートメントサロンを主宰。3児の母。長男の妊娠時に出会ったハワイ式オイルトリートメント「ロミロミ」に感動したことをきっかけに、この道へ。当初は癒しを目的としたボディリラクゼーションサロンとして開業し、現在は女性専用の痩身ダイエット専門サロンとして看板を掲げる。自宅の一室をサロンとして営んでいる。

「ただ、癒されたかった」に応える場所

久世さんが主宰するのは、東京都内にある女性専用のトリートメントサロンだ。いまでこそ「痩身ダイエット専門サロン」として看板を掲げているが、その出発点は、もっとやわらかい場所にあった。

「元々は、癒しのボディリラクゼーションサロンとしてやっていたんです」

開業当初のテーマは、ダイエットではなく「癒し」。しかし、訪れる女性たちと言葉を交わすうちに、久世さんはあることに気づく。痩せている人でさえ「もっと痩せたい」と願っている。ダイエットは、多くの女性にとって、ずっと心の片隅にあるテーマなのだ。
ならば、とあらためて痩身の技術を学び、メニューに加えた。お客様の声を起点に、サロンの形をしなやかに変えていく。その柔軟さが、いまのサロンを形づくっている。

起点——妊娠中に受けた、たった一度の施術

久世さんがこの世界に足を踏み入れたきっかけは、いまから17年前にさかのぼる。長男を妊娠していた頃のことだ。
当時の久世さんは、ある困りごとを抱えていた。お腹が大きくなるにつれて体は重くなり、疲れもたまっていく。それなのに——。
「妊娠していると、受け入れてくれるマッサージのお店が、全然なくて」

体がいちばん休息を必要としている時期に、頼れる場所がない。多くの妊婦が経験する、あのもどかしさだ。そんなとき、久世さんは一枚の広告に出会う。「妊婦さんでもOK」とうたう、ハワイ式オイルトリートメント「ロミロミ」のサロンだった。
ロミロミは、力任せに揉んだりリンパを強く流したりするのではなく、やさしく流れるような手技が特徴で、妊娠中の女性でも受けられる。半信半疑で訪れた久世さんは、その施術ですっかり心をほどかれた。

「すごく感動して。あ、私、これを仕事にしたいって、その時に思ったんです」
ただ癒されただけではない。久世さんの中で、進むべき道がはっきりと灯った瞬間だった。

「産んだら、行くぞ」

感動は、その場で決意に変わった。施術を受けたサロンが、技術を教えるスクールも開いていると、まさにその日に知ったのだ。
「産んだら行くぞ、って」

久世さんは出産を終え、長男がまだ1歳になる前に、そのスクールへ通い始めた。生まれたばかりの子を抱えながら、技術を学ぶ日々。授乳期の身ではあったが、「やりたい」という気持ちが勝った。ご主人に交渉し、通う時間をつくった。

「あの時に主人に交渉して、通えた。そこから、変わりましたね」

たった一度の施術で芽生えた想いを、行動に移す。その一歩が、のちのサロンへとつながっていく。

機転——子育てと、ぶつかり続けた日々

もっとも、そこから本格的な開業まで、道のりは決して短くなかった。

スクールで技術を身につけたあとも、長らくは友人や紹介のお客様だけを相手に、小さく続けていた。理由は、子育てだ。

子どもを優先に、と主人からも言われていて。主人は仕事、私は子どもたちのことを中心に家庭を支える、という役割分担の中で過ごしていました。

頭の中は、常に子供のことでいっぱいだった。お客様の予約を受ければ、簡単にはキャンセルできない。けれど、子供が急に熱を出したら——。その不安と、いつも隣り合わせだった。

「そこで、いちばんぶつかりましたね」

自分の都合だけで動けるわけではない。やりたい気持ちと、母としての責任。そのあいだで、久世さんは長く揺れ続けた。

末っ子の入学と、サロンになった一部屋

転機は、静かに訪れた。3人いる子供のうち、いちばん下の子が小学校に上がるタイミングだ。

「末っ子が小学1年生になり、少し手が離れてきたタイミングで、『これだったら始められるかな』と思ったんです」

それまで温めてきた気持ちが、ようやく動き出せる環境とかみ合った。久世さんは活動の幅を広げていく。

その背中を押したのは、住まいの存在も大きい。家を建てるとき、久世さんはご主人にこう伝えていた——一部屋を、サロンにしたい、と。

「その一部屋が、もうサロン部屋になったので。絶対ここでやるぞ、っていう気持ちでいました」

スクールに通ってから開業まで、長い年月が空いた。それでも気持ちが消えなかったのはなぜか。問うと、久世さんは迷わず答えた。

「これを、自分の天職だと感じてしまったので」

経営者として大切にしていること

久世さんが商いの軸に置いているのは、とてもまっすぐな思いだ。

「無理に売るのではなく、お客様に本当に必要だと思ったものを紹介したい」

経営である以上、商売としての側面は当然ある。それでも久世さんは、そこを最優先にはしない。

「自分が納得できるものを、納得できる形で。喜んでもらえるものだけを、すすめていきたい」

売上のためではなく、目の前の人が本当に喜んでくれるかどうか。その一点を、久世さんはぶれずに見つめている。妊娠中という、心も体もデリケートな時期に救われた自身の経験が、その姿勢の根っこにあるのだろう。

いつか、より多くの女性に——とりわけ、かつての自分のように行き場をなくした妊娠中の女性に、あの癒しを届けたい。その願いは、いまも久世さんの中で静かに育っている。

挑戦する人へ——「完璧じゃなくても、なんとかなる」

最後に、これから起業に挑もうとする女性へ、メッセージをもらった。久世さん自身が長く立ち止まっていたからこそ、その言葉には実感がこもる。

「私は完璧を求めてしまって。すべての環境が整ってから、と考えてしまったので、すごく遅くなってしまったんです」

上の子2人が小学校低学年の頃は、「働くなんて無理」と思い込んでいた。けれど、いちばん下の子が小学校に上がったいま、見える景色は変わった。

「今は、なんとかなる、完璧じゃなくてもいいんだ、っていう感覚になりました。全部が揃ってからじゃなくても、できることから始めていけばいい」

そしてもうひとつ、久世さんが正直に打ち明けたことがある。

「子どもがいるから、今は家庭を優先する時期。そう思うことで、自分のやりたい気持ちに、どこかブレーキをかけていたのかもしれません。けれど今は、完璧じゃなくても、できることから始めていけばいいと思えるようになりました」

完璧な準備が整う日を待つのではなく、いまできる一歩を踏み出す。17年前、一度の施術で人生の道を見つけた久世さんの歩みは、そう静かに語りかけている。

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