「一回、やってみてほしい」——名刺放置ゼロを掲げる24歳。他責から自責へ、大学在学中に踏み出したWeSales代表の起点と機転
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WeSales株式会社
|木村 海樹代表取締役

目次
プロフィール
木村海樹(きむら・かいき)
WeSales株式会社 代表取締役。大学在学中にフリーランスの営業代行として独立し、2025年10月に法人化。会社としては現在1期目。交流会や展示会で集めた名刺の「名刺放置をゼロにする」をミッションに、名刺交換後のフォローメールを自動化し、商談を獲得するためのSaaSを提供している。自身の営業現場での実体験から生まれたプロダクトで、個人の営業職でも使える低価格帯を貫いているのが特徴だ。
「集めた名刺を、放置しない」——実体験から生まれたSaaS
WeSales株式会社が掲げるミッションは、「名刺放置をゼロにする」。交流会や展示会で交換した名刺へのフォローメールを、自動化する営業支援プラットフォームを提供している。
背景にあるのは、名刺交換の後のフォローがほとんど機能していないという現実だ。その場でLINEやMessengerを交換できた相手にはつながっても、メールでのフォローとなると話は全くの別物。
様々な理由を付けて、メールでのフォローは後回しになってしまう。木村さんによれば、名刺交換後にきちんとメールフォローができている人は、ごくわずかだという。
「ほとんどの人が、メールのフォローができていない。1%程度しかできていないんです。その機会損失を少しでもなくすために、フォローメールを自動化するSaaSを提供しています」
一度に何十枚と交換した名刺。その一社一社の事業内容を調べ、メールを書いていく作業は、あまりに重い。だからこそ多くの営業パーソンが、そこで手を止めてしまう。木村さんは、その「もったいなさ」、「機会損失」に着目した。

起点——「作る側に回るべきだ。」
木村さんが独立を決めたのは、大学3年生のときだった。
きっかけは、留学から帰国した後の、少しほろ苦い経験にある。約1年間休学して留学に出ていた木村さんが日本に戻ると、同年代の友人はすでに就活を終えていた。真剣モードから解放され、遊びはじめる同級生たち。会えば会うほど、耳に入ってくるのは就活への不満だった。
「この企業はこうだった、インターンだけで落とされた、とか。そういう他責思考みたいなところが、元々あんまり好きじゃなくて」
否定され、嫌な気持ちになる——そんな空気から少し逃げたい気持ちもあった。それならいっそ、自分が「作る側」に回ればいい。そう考えた木村さんは、独立を決意する。とはいえ、インターンの経験もスキルもなかった。できることを消去法で探した末に残ったのが、営業代行だった。
ちょうど「フリーランス」という言葉が最も流行していた時期でもあった。その波に乗るように、木村さんはまず個人事業主として営業代行の道へと踏み出した。
独学とテレアポで、営業の腕を磨いた
営業のスキルは、ほぼ独学で身につけた。本を読み漁り、営業系のセミナーに顔を出し、YouTubeを観まくり、あとはとにかく実践だった。
「一番は、結局テレアポでした。やって、ミスって、を繰り返して。意外と本に載っている内容って、使えないものもあったりするので」
精神的に削られることも多い営業の世界で、木村さんを走らせ続けたものは何だったのか。その問いに、彼はまっすぐ答えた。
「生きていくためですね」
当初はアルバイトもしていたが、時給換算すればテレアポのほうが割がいい。生きるため、そしてなんとなく抱いていた「成功したい」という思い。そのためだけに、木村さんは行動し続けた。考えるだけで動けない人が多い中で、まず動いてみる。その行動力こそが、木村さんの原点にある。

機転——「行動が止まること」が、一番怖い
順調に見えた営業代行の日々にも、苦しい時期は訪れた。
法人営業では2割ほどの成約率で決まっていた商談が、あるとき10件連続で決まらなくなった。交流会では好感触だったのに、後日の商談ではまとまらない。原因もわからないまま断られ続けるうち、木村さんは自分を追い込んでいった。
「必要とされていない、みたいに、勝手に自己嫌悪に置き換えてしまって。営業をやっているのにクロージングが決まらない。そこが一番辛かったです」
後になってわかったのは、その時期が11月から12月にかけての、いわば「年末で決まりにくい季節」だったこと。1年目にはそれが読めず、売上の落ち込みをすべて自分のせいだと感じてしまった。実際、年が明けた1月には一気に商談がまとまり、状況は回復した。
この経験から、木村さんは大切な教訓を得る。
「目の前の売れ行きだけで判断すると、行動が止まってしまう。そして怖くて、さらに行動ができなくなる。その悪循環が一番ダメなんだと、あの辛かった時期のおかげでわかったんです」
止まらないこと。その気づきが、彼を立ち直らせた。
「せっかくの名刺に、何もできない」——SaaSへの転換
営業代行からSaaSへ。その転換もまた、木村さん自身の実体験から生まれた。
独立当初、資金に余裕はなく、業務委託を多く雇うこともできない。テレアポも自分でこなし、日中はアポ取り、夜は交流会へ。平日はほぼその繰り返しで、週7で働くことも珍しくなかった。メールを書く時間は、土日くらいしか残っていなかった。
「せっかく交換した名刺に、何もできない状態で。やろうと思っているのに、本当に机に突っ伏して寝ちゃってるとかもありました。」
AIという便利な道具が登場しているのに、それを活かせない自分へのもどかしさもあった。そこで木村さんは、まず自分のために、AIを使った小さなツールを作ってみる。すると時間をかけずに商談が取れるようになり、きちんと眠れるようになった。
営業職にとって、メール作成そのものに時間をかける必要はない。相手に、自分が書いたと受け取ってもらえれば、その時間は商談の準備に回したほうがいい——。そう考えたとき、同じように困っている人がいるはずだという確信が芽生えた。自分のために作った小さな仕組みが、今のプロダクトへと育っていった。

他責から自責へ、そして「会社」を育てる視点へ
起業を経て、木村さんの中で最も大きく変わったのは、考え方だった。
独立を決めたことで、他責思考の危うさを痛感したという。
「他責だと、自分って終わるんだな、と。しかも、自分が独立前に思っていたものよりも遥かに、自責思考じゃないとだめだったんです」
契約書の些細な一文をつかれて、お金を持っていかれる。1期目の小さな会社でも、そうしたことは実際に起きた。誰かのせいにしている時間があるなら、自分で売上を上げに行く。その徹底した自責の姿勢が、木村さんを支えている。
法人化して以降は、また別の視点も加わった。法人格と自分自身を切り分ける難しさだ。一人社長ゆえに、会社に利益が溜まっても自分のお金ではない。個人事業主のときよりも自由に使えるお金は減り、はじめは「何のために法人化したのか」と戸惑いもあった。それでも、木村さんの考えはこう変わっていった。
「会社というものを、ちゃんと人として育てていく。自分のためだけじゃなくて、この会社の未来を守らなきゃいけないんだ、と」
自分だけの視点から、会社という存在の未来を見据える視点へ。経営者としての成長が、その言葉に表れている。
これからのWeSales——「名刺放置ゼロ」を、すべての営業職へ
木村さんが見据える目標は明確だ。数字の面では、2期目で年商3億円の達成を掲げる。
そしてその根底にあるのが、「名刺放置をゼロにする」というミッションだ。特徴的なのは、あえて法人向けの高額プランをほとんど売っていないこと。理由は、個人の営業職一人ひとりや、一人社長、フリーランスにも使ってほしいという強い思いにある。
「法人価格にしてしまうと、社長が『いらない』と判断した瞬間に、そこにいる社員は使えなくなってしまう。それが嫌なんです」
かつての木村さん自身がそうだったように、上司からKPIを課され、交流会で必死に名刺を集めても、日中の商談でメールを送る時間がない——そんな営業パーソンは多い。一度名刺を交換した相手へのメールは、まったくの新規リストへの営業に比べて、返信率が桁違いに高い。だからこそ、集めた名刺を放置するのは、あまりにもったいない。
WeSalesの最低プランは、月1,000円以下。「ミスってもいいや」と思える価格で、名刺交換の機会がある人すべてに届けたい。それが木村さんの願いだ。予算の限られるなかで、交流会への協賛やSNS発信など、小さく着実に広げている最中だ。

挑戦する人へのメッセージ
最後に、これから起業する人、そして就活の空気に飲まれている学生たちへ、木村さんはメッセージを寄せてくれた。まだ1期目だからこそ、これから踏み出す人にとって「近い存在」でありたいという。
「私自身は中堅私立の大学出身で、何も経験がなくて、YouTubeだけ見て独立しちゃったようなタイプなんです。でも、一歩踏み出してみたら、怖いことしかなかったんですけど、周りを見渡すと、実は助けてくれる人がいて」
助けられ、恩を返すと、また助けてくれる。踏み出してみて初めて、自分だけではないと気づいたという。今でも「来月どうなるんだろう」という怖さはある。それでも――。
「幸せですかと言われたら、やりたいことができていて心から幸せだと答える自信があります。独立して後悔したことは、一つもないんで」
だからこそ、木村さんはこう締めくくった。
「今すぐ、AIでホームページを作ってみるとかでもいいんで、一回やってみたら、目に入る景色が変わってくると思います。ぜひ起業して、また私とお話できる機会ができたら、これ以上に嬉しいことはないです」
何もなかった自分でも、こうして笑顔で生きている。その実感のこもった言葉が、これから踏み出す誰かの背中を押していく。

